ちよりの読書室

読んだ本の感想をゆる~く書いています。

あなたの好きな映画はなんですか?

読んだ本

『スタッフロール』

深緑野分

文藝春秋

 

深緑野分さんの小説は『ベルリンは晴れているか』『戦場のコックたち』『この本を盗む者は』を読んだのでこの本も読みました。

 

戦後のハリウッドで特殊造形技師として働いていたマチルダと現代のロンドンでCGクリエーターとして働くヴィヴィアン、映画に関わるふたりの女性の物語。

 

作品の中に実在する映画が出てくるので、ふと自分が好きな映画について考えてみた。

やっぱり『ブレードランナー』が一番好きかもしれない。舞台になっているロサンゼルスの街並みは今の技術から見ればチープな感じだけどなぜかそれが良い。(新しい2049も嫌いではないし、原作小説も好きです)

キャラクターで言えば『グレムリン』のギズモが好きです、可愛くて賢い。この小説にも出てくるが過去の作品の人気キャラクターをフルCGでリメイクするとなったら揉めたように、ギズモをフルCGで再現となると複雑な気持ちになるかもしれない。

 

読書感想なのに映画の話になってしまった。本の帯にあるように「アナログを愛する者も、デジタルを愛する者も、楽しませる作品であればいい」本当にその通り。

 

本の内容に話を戻すと、専門用語がちょっと難しい部分があったけれど、マチルダとヴィヴィアンのふたりが映画の世界でもがきながらも仕事に打ち込む姿は、作品への愛に満ち溢れていて素敵です。

どのような形であれ好きなことを続けることは大切なことだと思いました。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

 

 

 

 

 

 

歴史を知る

読んだ本

アウシュヴィッツのお針子』

ルーシー・アドリントン

宇丹貴代実訳

河出書房新社

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タイトル通りアウシュヴィッツにあった高級服仕立て作業所と呼ばれるファッションサロンで働いていたお針子について書かれている本。小説かと思って手に取ったらノンフィクションだったことに驚きました。

あのアウシュヴィッツで華やかなドレスが作られていたなんて。

 

ユダヤ人というだけでアウシュヴィッツに連れてこられ、劣悪な環境下での過酷な労働を耐え抜いて高級服仕立て作業所に移動することができ、お針子として働くことで生き延びた女性たち。

厳しい状況のなか、思いやりや助け合いの心をもって行動することはとても難しい。果たして、自分だったらどうだろうと考えさせられました。

 

ナチス高官の妻たちは、自分たちよりも下等だと思っていたユダヤ人に服を作ってもらうのはどんな気持ちだったのだろう。矛盾を感じなかったのだろうか?

 

生きてアウシュヴィッツから帰ることができたとしても、過去の辛い経験を抱え、周りからの偏見や無理解から苦しめられながらも、戦後を生きていくお針子たちの姿は心を揺さぶられます。

 

あまりにも残酷な内容で読んでいてとても苦しく悲しい気持ちになりました。

何と言い表してよいかわからず、感想もなかなか書けませんでした。

しかし、今を生きる私たちがこのような歴史を知ることが、今後同じ過ちを繰り返さないための第一歩なのかもしれません。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

エッセイに感想ってあんまりないよね

読んだ本

『小日向でお茶を』

中島京子

主婦の友社

 

中島京子さんの初エッセイ。

『夢見る帝国図書館』『やさしい猫』など優しい視点からの小説が好きです。

ちょうどコロナ流行前からコロナが流行りだして生活が一変したころに書かれたエッセイです。

 

コロナ前の旅先で出会った美味しそうな料理やコロナ禍で出かけることができずおウチで作る世界の料理などお腹が鳴りそうなお話がたくさん。

 

健康に気を使い歳をかさねることに上手く向き合うお話など読んでいてとても楽しかった。

 

私も足のむくみがひどいからフォームローラー買ってみようかな。

 

次はどんな本を読もうかな。

物語の結末について述べています

読んだ本

『惑う星』

リチャード・パワーズ

木原善彦

新潮社

惑う星

 

正直に感想を書こうとするとタイトル通り物語の結末について述べることになります。ネタバレが嫌だと思われる方はこれより先は読まないという選択をお願いします。

(そのため長めに改行しておきます)

 

 

 

 

 

 

 

この物語ではアメリカ社会の政治的分断、環境破壊、SNSの影響力などの現代社会が抱えている問題について提起してあり、考えさせられることが多いです。

 

話の中心になっているのは、母親を早くに亡くし不安定になっている少年ロビンと男手ひとつで息子を育てている父親シーオの物語。

このお父さんは不器用ながらわが子のためにできる限り向き合って奮闘している。(間違った選択をしているところもあったとは思うが)ロビンに話してあげる惑星の物語は美しく興味深い。

繊細な息子のロビンが絶滅危惧種の生物に心を寄せ健気に生きていく姿も感動的。

父子の愛が描かれていてとても良い物語だったのに…。

 

この結末は私には受け入れがたい。

なぜこんな終わり方にしたんだろう?

決してすべての物語がハッピーエンドであってほしいなどと思っているわけではありません。悲しい結末でも何か心に余韻が残るものならばいいのです。ほんの少しだけでいいから希望があってほしい。

このバットエンドはただ辛いだけ。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

 

 

 

X!

読んだ本

『紅だ!』

桜庭一樹

文藝春秋

紅だ!

 

今回の桜庭一樹作品は女子テコンドーのオリンピアン真田紅と元警視庁勤務の黒川橡、対照的なふたりが活躍する探偵バディもの。

 

疾走感があって読みやすくておもしろい。

 

装画も素敵です。

 

あまり色々書くとネタバレしてしまうので今回の感想は手短に。

 

登場するキャラクターはみな個性的でそれぞれの話も読んでみたいし、まだ描かれていない伏線もあると思うのでアナザーストーリーや続編があるのかな?

 

次はどんな本を読もうかな。

 

 

 

あなたにとっていい本とは?

読んだ本

『あの図書館の彼女たち』

ジャネット・スケスリン・チャールズ

高山祥子訳

東京創元社

あの図書館の彼女たち

 

タイトルに「本」「図書館」が付いた本で何度失敗しただろうか。

本好きな私は書名に「本」「図書館」とあるとどうしても読みたくなって手に取ってしまうのですが、実際に読んでみるとあまり関係のない内容だったりしてがっかりすることも。

(ちゃんと確認しない私が悪いのですが・・・。)

でも、この本は間違いなく「本」と「図書館」の物語。

 

第二次世界大戦下パリのアメリカ図書館の司書として働くオディールの半生とアメリカ図書館の仲間たちを描いた物語。

 

オディールと一緒に働く図書館職員、図書館利用者は個性豊かで魅力的な人たちばかり。やがて戦争が始まると戦場の兵士たちに本を送る活動をしたり、図書館に通えなくなったユダヤ人に本を届けたり、アメリカ図書館の人々の自由を守るための勇気はとても素晴らしい。

 

アメリカに渡った孤独なオディールがフランス時代のつらい出来事と葛藤しながら隣に住むリリーと友情を育んでいく様は心を揺さぶられる。

 

作品の中に「大好きなこの世界が終わってしまうのが悲しいと思うようになった。まださようならを言う気になれなかった。場面を味わうように、ゆっくり読んだわ。」とういうセリフが出てくる。わたしのいい本の定義も早くこの先が知りたい、でも読み終えるのが惜しい最後のページをめくるのが惜しいと思える本がいい本だと思っている。

まさしくこの本もそんな本だった。

 

読んでよかったと思える一冊でした。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

 

よーく考えてみると

読んだ本

『とんこつQ&A』

今村夏子

講談社

とんこつQ&A

 

今村夏子さんは『こちらあみ子』から新刊が出るたび読んでいる作家です。

読後に何とも言えない心が「ざわざわ」する作品が多いです。

 

今回は表題作の『とんこつQ&A』と他3編が収められた短編集。

 

『とんこつQ&A』

タイトルを見たとき何だこれ?と思いましたが、読んでみるとそれが何なのかがわかります。

幸せな家族が経営する街の食堂のように見えて実は・・・。他人から与えられた役を演じさせられている不穏な物語。

 

『嘘の道』

大なり小なり嘘をついたことのない人はいないと思います。そして噓をつくと後ろめたい気持ちになるものです。「消えてなくなる」の意味が恐ろしいです。

 

『良夫婦』

題名からの裏切りがスゴイです。良い人と見せかけて実はとても利己主義な夫婦。淡々と事後処理をする夫が怖いです。

 

『冷たい大根の煮物』

要注意人物に警戒して過ごしていたのにやっぱり騙されてしまう主人公。しかし、最終的にはこれで良かったのかなぁ。

 

どれも最後のページを読んだ後にゾクッとする作品ばかり。

そんなことはさすがに無いだろうと思うのですが、よーく考えてみると、ここまではないけれど似た人が近くにいるかもしれない。そして、自分自身もちょっと心当たりがあるかもと心がチクリとしたり。

人間の深層をくすぐって「ざわざわさせる」だから今村夏子作品は癖になるのかもしれません。

 

次はどんな本を読もうかな。