ちよりの読書室

読んだ本の感想をゆる~く書いています。

時代は変われど

読んだ本

『喜べ、幸いなる魂よ』

佐藤亜紀

KADOKAWA

喜べ、幸いなる魂よ

 

佐藤亜紀作品は『スウィングしなけりゃ意味がない』『黄金列車』『バルタザールの遍歴』を読んだことがあり、どれもおもしろかったのでこの本も読んでみました。今までの作品とちょっと違う気がします。これは、18世紀のベルギーで亜麻を扱う商家の双子の姉ヤネケと幼なじみのヤンを中心に展開する家族の物語。さぁ、いったいどの切り口から読んだらいいのだろう?どの登場人物に心惹かれるのかにもよるなぁ。

 

最初に思ったことは、子供産みっぱなしだし、ヤンのことも突き放してしまうし「ヤネケ、クールでドライすぎない?」

よく考えてみると今の価値観とは違うこの時代にヤネケのような賢い女性が自分らしく生きていくためにはこうするしかなかったのかもしれません。

 

ヤネケが移り住んだベギン会は実際に存在した組織だそうで、この物語にでてくるベギンの女性たちの自立した生き方はたくましくて、うらやましいです。

 

ヤンはヤネケと一緒に暮らしたいと願いながらも、その願いはなかなか叶いません。ヤネケを愛しているからこそ、家族の死など様々な困難を乗り越えて商売を維持しようとするヤンの姿はとてもせつないです。

ヤネケに振り回されているようでも、こうすることが、ヤンの本懐だったのかもしれません。

 

この後2人はどうなるのだろう?

 

時代は変われど自分らしく生きるというのはとても難しい。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

 

やっぱ最高!町田康

読んだ本

『私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?』

町田康

NHK 出版新書

私の文学史

前の本を読み終わるのに2022年から2023年と年をまたいでしまったため、この本が2023年初めて読む本となります。年の初めはやはり一番好きな作家の本にしようということで町田康先生の本にしました。

 

この本はNHK文化センターで町田先生が影響を受けた本や自身の創作活動について語るという講座を書籍化したものです。

 

町田康作品は「読みにくい」「わかりづらい」などと言われることもあるのですが、私はその独特の世界観にドはまりしていて、ほとんどの作品を読んでいます。

 

この本の前にムッソリーニの小説を読んでいたのですが、私には難しすぎて読むのに苦労しました。第一回で歴史の本は人間が出てくるから面白いとおっしゃていて、そうか歴史小説=勉強と構えて読んでいたので難しいと感じてしまったので、そうではなくムッソリーニが主人公の物語だと思って読書すれば、また違う感じ方ができたのではと気づかされました。

 

創作について語っている第六回では、小説家としてやりたいのは「お笑い」というお話。たしかに、町田作品に出てくる人物はどこか滑稽で、やっていることもドタバタな喜劇のような感じでおもしろい。私が読んでいるのは町田先生のお笑いだと思うと、それだけで楽しい気持ちになります。

 

町田作品が苦手だと思われる方は、エッセイ(随筆)を読んでみると良いかもしれません。犬がお好きなら『スピンク日記』、猫がお好きなら『猫にかまけて』など町田先生の素で書いている文章は、あの独特な世界観は変わらず小説よりは読みやすと思います。

 

町田先生が自分語りをしてくれたおかげで、なぜ私が町田作品に心惹かれるのかわかった気がします。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

 

 

 

 

残念ながら越年です

読んだ本

『小説ムッソリーニ 世紀の落とし子 上・下』

アントニオ・スクラーティ

栗原俊秀訳

河出書房新社

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野球がなければ本を読んだらいいじゃない!ということで読み始めた大作

野球は終わったけど、そこには絶対に負けられない戦いがある・・・

サッカー(ええ、観ましたよ全部じゃないけど)

私、お笑い痛ファンなもので「M-1」の動画をいろいろ観ていたらあまり本を読む暇を作れず。

2022年中に読んでしまうぞという意気込みも虚しく、残念ながら越年してしまいました。

 

いざ、ページをめくるとまず目に飛び込んでくるのは登場人物の紹介。

多い・・・この人物を全部頭に入れて読み進むのはかなり難易度が高いなぁ、ざっくり目を通して読み進めることに。

読んでも読んでも減らないページ数、もしかして増えてます?と思いながらもやっと読み終わりました。

 

ムッソリーニが戦闘ファッショを創設してローマに進軍するまでの物語。

あくまでも小説と銘打っているものの、どのようにしてファシズムが誕生したのか、そしてムッソリーニの人物像が詳細に書かれています。

そのため、ファシズムムッソリーニを評価することになるのではないかという懸念が取りざたされイタリアでも賛否両論あったようです。

しかし、歴史を知ることにより今後このような間違いを犯さないようにすること、暴力で何かを成し遂げようとすることを許さない姿勢を示すことが大事なのではと思います。

 

この物語はまだまだ続きがあるようですが、次作を読むかどうかはわかりません。

かなり、難しい読書でした。

 

2023年はもっと本を読もう・・・

えっ、3月に野球がある?

読書、お笑い、野球、どれもバランスよく楽しみたい。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

 

はよ、断りば言うてきんしゃい!

読んだ本

 『少女を埋める』

 桜庭一樹

 文藝春秋

  少女を埋める

 

かなり前から桜庭さんの本は新刊が出るたびに購入しているのですが、手元にはあったものの何となく不吉な題名におののいて読むのが遅くなってしまいました。

そして、わたしはSNSをやっていないのでこの本の書評をめぐりいろいろなことが起こっていたのを読んでから知りました。

このブログはただ本を読んで、ネタバレしないようにということだけ気をつけて、自分の思ったことをただ書き綴るというものなのですが、今回はそうはいかないようです。

国語の問題みたいに本を読むのは嫌だなぁ~。

全編の感想を一度に書くのは難しいと思うので「少女を埋める」と「キメラ」「夏の終わり」の感想は分けて書きたいと思います。

 

『少女を埋める』

桜庭さん本人が主人公と思われる私小説

昔ながらの考えにとらわれている母親との確執、世の中の理不尽。受け流したほうが楽なのかもしれないけれど、それではいつまでたっても、弱い者は虐げられたままで悲しい思いをして生きていかなければならない。自分を大切にして生きることはとても難しい、でも、難しくても勇気を持って行動しなくてはと思いました。

心に響くとても良い物語でした。

 

『キメラ』『夏の終わり』

 

ケアがテーマの書評に『少女を埋める』が取り上げられているけど、この物語はケアが主題の話ではないと私は思います。これは読む人の感じ方を尊重するとして、《お母さんがお父さんの介護中にお父さんを虐待した》は、なんで?どうして?と疑問がいっぱいです。

 

何度も繰り返し読んでみましたが、やはり介護中にお母さんからお父さんへの虐待があったと思われるシーンはないです。

お父さんが病気になる前にお母さんが(身体的なものなのかそれとも言葉によるものなのかわからないけれど)お父さんに暴力をふるっていたのだろうと読むことができるところはありました。

 

どうすれば、このような捉え方になるのか?

なぜ、作者本人が事実とは違うと言っているのに、訂正しないのか?

私の頭に浮かんできた言葉は九州人ならおなじみの東雲堂の二〇加煎餅(にわかせんぺい)のCMの

「はよ、断りば言うてきんしゃい!」

標準語にするならば

「はやく、謝ってきなさい!」

人間は間違ったり失敗をしてしまうものです。それを、認めず言い訳ばかりしていないで謝ればいいのになぁと思いました。

謝ったら負けとか、言い負かしたら勝ちとか良くない風潮では?

 

 

このことで桜庭一樹さんはとても傷ついだろうな。

 

あぁ、本は楽しく読みたい。

 

次はどんな本を読もうかな。

えっ!町田先生がBL・・・。

読んだ本

 『男の愛 たびだちの詩』

  町田康

  左右社

  

   男の愛 たびだちの詩

 

私が本を読むときに心がけていることは、色々なジャンル・色々な作家の本を読むようにすることです。

でも、時代小説は苦手で今まであまり読んできていないのです。だって、漢字がいっぱいあるじゃないですか(どの小説にも漢字はあると思うけど)。三島由紀夫も読まなくていいと言っていた気がしますし(たぶん私の大いなる勘違いだと思いますが)。

しかし、大ファンの町田先生の本、読まないわけにはいかない!

ということで、読みました。

 

清水の次郎長ちびまる子ちゃんがまねしていたような気がするけど、よく知らないなぁ。だいじょうぶかなぁ。

なんて心配は全くの杞憂でした。

楽しい町田ワールド全開で、あまり歴史に詳しくなくてもコメディとして読むことができます。

つづきがあるみたいなので楽しみです。

次郎長万歳!

 

次はどんな本を読もうかな。

 

 

 

大ドンデンの帝王

読んだ本

 『魔の山

 ジェフリー・ディーヴァー

 池田真紀子訳

 文藝春秋

 

  魔の山

 

懸賞金ハンターのコルター・ショウが主人公のクライムサスペンス第2作目。

第2作目ということは、第1作目があります。第1作は『ネヴァー・ゲーム』というタイトルですでに刊行されています。1作目と2作目は舞台になる場所も内容も違っているので、2作目のこちらだけ読んでも特に問題はない気もしますが、一応伏線として主人公の家族の物語が描かれているので気になる方は1作目から読まれることをお勧めします。

 

サバイバルの知識を父親に叩き込まれた主人公のショウが、ある依頼をきっかけにカルト教団に潜入し、その実態を暴き出すという物語。

 

本当にカルトって怖いですよね。

自分は絶対騙されないと頑なに思っていると危ないみたいです。自分も騙されるかもしれないから、もし気になることがあったら信頼できる人に相談しようくらいの心構えでいるのが良いそうです。

ちなみに私は、学校を卒業してすぐに繫華街を歩いているとなんだか同級生のような感じで話しかけてきた人がいて、全く面識がないので「これは宗教かマルチの勧誘だ」と思い怖くなって近くの交番に駆け込んで助けを求めたことがあります。

その後、仲の良い同級生とごはんに行ったときに「ちよりちゃん、○○が話しかけたら交番に逃げ込んだらしいね。○○びっくりしてたよ。」と言われました。どうも同じクラスの人だったみたいです。卒アル見てもいまいち誰だかピンとこず・・・。

なんかもうダメすぎて自分でもびっくりしています。あの時の人本当にごめんなさい。

 

あっ、ネタバレしないようにしていたらまた全く違う内容の話をしていた。

本の感想ですが、さすが大ドンデンの帝王(私が勝手につけた異名)どきどきハラハラでおもしろかったです。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

 

 

 

わからない

読んだ本

 『日々のきのこ』

 高原英理

 河出書房新社

 

 日々のきのこ

 

ジャケ買いです。

ヒグチユウコさん装画の本を見つけると作者や内容を確認せずに買ってしまうのです。

きのこの本?

生物学の本だったらどうするのよ、理科めちゃくちゃ苦手なのに。

 

でも、違ったようです。

どんなジャンルになるんだろう、ホラーのようなSFのような。あえて言うなら幻想文学とか。

どう理解したらよいのかちょっと悩みます。

とにかくきのこがいっぱい溢れているお話。

 

ああ、私にはこの物語を楽しむ理解力も知力もなく、ただ自分が無能なことを思い知らされた読書でした。

 

あっ、画はとてもかわいかったです。

 

次はどんな本を読もうかな。