ちよりの読書室

読んだ本の感想をゆる~く書いています。

事実は小説よりも奇なり

読んだ本

ヒトラーの馬を奪還せよ 美術探偵、ナチ地下世界を往く』

アルテュール・ブラント

安原和見訳

筑摩書房

 

第二次世界大戦時、ヒトラー官邸前に置いてあった一対の馬のブロンズ像をめぐるノンフィクション。

 

高さ3メートル超、重さ1トン。まさかこんな大きいものが現存するなんて!

美術品のブラックマーケットに突如現れたヒトラーの馬の真贋を見極め奪還するため美術探偵が活躍します。

 

ナチ残党、ネオナチ、東ドイツのシュタージ、旧ソ連KGBなど、たくさんの人々の思惑が入り乱れノンフィクションとは思えないほどの目まぐるしい展開に。

 

帯にあるとおり「事実は小説よりも奇なり」な本でした。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

#読書 #ヒトラーの馬を奪還せよ 

#美術探偵、ナチ地下世界を往く

#アルテュール・ブラント 

#安原和見 #ノンフィクション

日本のはじまり

読んだ本

『口訳 古事記

町田康

講談社

 

ヤマタノオロチ」や「因幡の白うさぎ」など一度は聞いたことがある人も多いであろう日本のはじまりのお話『古事記

 

まぁとにかくおもしろい!

それ以外の感想は無いかもしれない。それくらいおもしろかった。

 

さすが町田先生、新たな口訳で斬新な『古事記』に仕上がっている。

荒唐無稽に暴れまくる神々が独特のワードセンスで(しかも関西弁で!)語られていて、なんだか漫才を聴いているかのような感覚に。

 

古典=勉強になってしまっていた私も、古典って実はおもしろいかもと思わせてくれる本でした。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

#読書 #口訳古事記 #町田康 #伝承 

#神話

アップデート

読んだ本

『彼女が言わなかったすべてのこと』

桜庭一樹

河出書房新社

 

ある日偶然再会した中川君と主人公が住む世界はどうやら違う世界らしい・・・

パラレルワールドに生きる女性のお話。

 

実際に自分の身に起こったことでなければ、本当の意味で理解することは難しい。何かあった時の感じ方も人それぞれで違う。相手のことを思いやって言ったことでも逆に傷つけてしまったり。思い込みと決めつけで相手の気持ちを考えない人に深く傷つけられたり。強い言葉で相手のことを言い負かしたほうが正しいという今の風潮に辟易したり。

ふとこの本に挟まっていた刊行物のお知らせに載っていた言葉が目に止まった「多様化の時代に必要なのは知識と倫理感のアップデート」。確かに!でもアップデートが正しくできる人がどれだけいるのだろう。私も自信がない。自分の意見をきちんと人に伝えることも大切だし、相手のことを尊重することも大切。

 

今年も残すところあとわずか、今のところ2023年に読んだ本は15冊。私としてはもっとたくさん読めたはずだったと思う。なぜ本を読む時間を取れなかったのか?野球とお笑いを見ることに割く時間が多かったから。とても悲しいことだけど野球を応援することができなくなった。でも、本を読む時間は増えるのかもね。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

#読書 #彼女が言わなかったすべてのこと

桜庭一樹

いろいろと考えさせられるなぁ~

読んだ本

『破果』

ク・ビョンモ

小山内園子訳

岩波書店

 

韓国文学を読むのは初めてです。

 

殺し屋のおばあさんの話。

 

読みづらい文体で最初は戸惑いました。(作者の意図するところらしい)今まで一流の殺し屋として活躍していた主人公爪角(チョガク)。老いて身体だけでなく心にも変化があって今まで通り仕事ができなくなってしまう。そこから過去の因果なども絡み合って壮絶な戦いを繰り広げることになる。

手に汗握る戦いの様子、主人公の心の機微がとても良く描かれていて、グングン引き込まれて一気に読み終えた。

今年読んだ本のなかで一番おもしろかった。

 

ちょうどこの本を読み終わった時、新聞に韓国でショーヘアの女性が髪型を理由に見知らぬ20代男性から暴行された事件のニュースが載っていた。(韓国ではショートヘアの女性をフェミニストだとして攻撃する事例があるとのこと)この記事を読んで、韓国でこの本は決してただのエンターテインメント小説ではなく男女の分断などで揺れ動くこの状況を打破してくれそうな主人公に心を寄せて読まれているのかもしれないと思った。

いろいろと考えさせられるなぁ~

 

次はどんな本を読もうかな。

 

#読書 #破果 #ク・ビョンモ #小山内園子

 

どっちなんだい!

読んだ本

『楊花の歌』

青波杏

集英社

 

初めて読む作家さんです。

 

戦時下諜報員として活動するリリーと楊花の物語。

 

誰が味方で誰が敵なのかハラハラする前半はスパイ小説。

 

後半に描かれる楊花の過酷な運命の物語は充分詠みごたえがある。

 

当時の緊迫した様子、ふたりが生きていた街の喧騒や息づかい、楊花の産まれた集落の自然の素晴らしさ、現地の食べ物などよく描かれていた。はじめに張られていた伏線の回収もハッと目を見張るものがあってとてもおもしろかった。

 

読む前はスパイ小説だと思ったけれど読み進むと恋愛小説なのかも。

う〜んどっちなんだい!

 

次はどんな本を読もうかな。

 

#読書 #楊花の歌 #青波杏

やっちまったな~

読んだ本

『最後の語り部

ドナ・バーバ・ヒグエラ

杉田七重訳

東京創元社

 

読書の記録を付けていて読了日を確認したら10月16日。1ヶ月以上感想も書かないで私は何をしていたのだろか?(野球を見たり、M-1の動画を見たりしていたような・・・。)1ヶ月前の記憶をたどりながら感想を書いていきたいと思います。

 

SF小説が読みたいなと思い書店で手に取り買って家に帰ってよく見たら児童書・・・。やっちまったな~。(なんでちゃんと確認しなかったんだろう)

 

おばあちゃんから話してもらう昔話が大好きな13歳の少女ペトラが主人公のSF。

 

カメが出てくるところはミヒャエル・エンデの『モモ』ウサギが出てくるところは『不思議の国のアリス』が思い出されます。

 

物語はなんやかんやあって、SF小説ではあるのですが今この世で一番大きな声で叫ばれているであろう多様性は大事だよというお話しでした。多様性について考えると巡り巡って沈黙することになるんですよね〜。なんだか難しいなぁ多様性。

きっとこの本を手に取り読む子供は、見た目や考え方の違いで差別なんかしないようにすでに学んでいる環境にあると思います。

 

次はどんな本を読もうかな。

 

#読書 #最後の語り部 #ドナ・バーバ・ヒグエラ #杉田七重 

 

 

帯買い

読んだ本

マナートの娘たち』

ディーマ・アルザヤット

小竹由美子訳

東京創元社

 

シリアで生まれて七歳の時にアメリカに移住してきたアラブ系アメリカ人作家の短篇集。

 

書店の店頭に立っていたあの時、私はとても困難な状況にあったので、本の帯の「わたしたちは、だいじょうぶだ。」という文字にすがるように手に取りました。

 

『浄め(グスル)』

亡くなった弟を憶う姉の悲しみがひしひしと伝わってきます。

 

マナートの娘たち』

視点があちこちに飛んでちょっと難しかった。

 

『失踪』

今村夏子さんの『こちらあみ子』を思い出しました。

 

『懸命に努力するものだけが成功する』

今話題になているあの事務所の事件を彷彿とさせる。最後の言葉が胸に突き刺さります。

 

『カナンの地で』

イスラム教では認められていない同性愛を隠して生活する男性の苦悩。

 

アリゲーター

原書ではこの物語が表題作になっているらしい。人種差別を扱った話でとても大事なことだとは思うのですが、とにかく難しすぎた。

 

『サメの夏』

アラブ系というだけで差別されてしまう悲しさ。

 

『わたしたちはかつてシリア人だった』

こちらも視点があちこちに飛んでいく。最後の作文でなんとか落ち着いた。

 

『三幕構成による。ある女の子の物語』

主人公のある女の子は居場所が無く、やさしくしてくれる周囲の人たちにも冷たい態度で返してしまう。とてもせつない物語。ある女の子にすばらしい未来がありますように。この本の中でこの作品が一番好きでした。

 

現代社会が抱える問題を扱った物語で考えさせられることがたくさんあったものの、視点があちこちに飛んでいく作品は理解するのに苦労しました。

 

次はどんな本を読もうかな。